見舞い

曇り、風强し。九月に入り俄に秋の風吹く。道場にて髮型を批判さる。今日の武道家の髮は短ければ短きほど譽められる物の如し。

午後に祖母の見舞ひに行きしが、體に管を通され入れ齒も外され息も絕え絕えになりし祖母を見るは忍びなし。
「お祖母さん朱雀が來ましたよ」
「みんな大きくなつた…」
「えゝ、私も早參拾ですよ。殘念ながら娵はまだですがね」
「いゝ娵を…」
しばし骨と皮ばかりとなりし手を握りて後、病室を出づ。

夕刻、蓋を閉めてかの人と會ふ。餘の家具を見る目も以前より現實的になりけり。